令和4年の弁理士試験 改正が絡んだ短答の問題を解いてみる

2023年5月5日

改正は受験生を悩ませる

法律は法改正はされます。弁理士試験は試験日に施行されている最新の法律で出題されます。
時代に合わせて人々の生活や科学技術が変化していくので当たり前のことだと思います。
しかしなかなか合格できずに長期間勉強をしている受験生にとっては、改正は結構嫌なことです。
一度覚えたことを書き換えることは容易ではありません。勉強して書き換えたつもりでも、とっさに改正前の知識で回答してしまったり、そもそもどっちだったがわからなくなってしまうことが度々あると思います。
私も合格まで時間がかかったので、実体験としてその大変さを経験しました。
さらに厄介なことに改正された部分は得てして試験で狙われやすいです。特に短答試験で。

悩む男性

合格後も改正に悩まされる

そして、せっかく合格してもそのあとも法律はガンガン改正されていきます。。。弁理士が扱う法律は時代の変化に対応しなくてはならないので毎年何らかの改正がなされている気がします。
弁理士になっても知識をメンテナンスしていかないといけないです。特に実務をやっていない私のような人間は厳しいです。
ただ幸いにも私の場合、弁理士登録しているので改正の情報は、弁理士会の継続研修で入手できます。しかもリアル説明会またはオンライン説明会で改正の内容を無料で聞けたりします。
オンラインで聞けるのが非常に素晴らしいですよね。弁理士業務をやっておらず平日にリアル説明会に行けない私のような人間には非常にありがたいです。

↓↓↓知財部に配属されたらとりあえず弁理士の勉強を始めましょう。オンライン授業なら全然安いですよ。

改正が問われた問題 

 前置きがなげーんだよ。結局改正の問題はでたんかよ?

失礼しました。特許・実案の第二問ででました。
解いてみましたので、ご説明します。

特許・実案の第二問

訂正審判、特許無効審判及び延長登録無効審判並びにその不服申立ての手続に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものは、いくつあるか。

(イ) 特許法第 67 条第2項の延長登録の出願(いわゆる期間補償のための延長登録の出願)における拒絶をすべき理由のうち、特許法第 125 条の2第1項に規定される延長登録無効審判を請求することができる理由とされていない理由はない。
(ロ) 特許無効審判の審決に対する訴えの審理において、東京高等裁判所は、当事者の申立てにより、その事件の争点の性質を考慮して、必要があると認めるときは、広く一般に対して、当該事件に関する特許法の適用その他の必要な事項について、相当の期間を定めて、意見を記載した書面の提出を求めることができる。
(ハ) 特許無効審判において被請求人が提出した答弁書が不適法なものであってその補正をすることができないものとして決定をもって却下された場合、行政不服審査法の規定による審査請求をすることができる。
(ニ) 審判長は、当事者双方から申立てがあれば、審判官及び審判書記官並びに当事者及び参加人が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、特許無効審判の口頭審理の期日における手続を行わなければならない。

(ホ) 特許権者は、訂正審判を請求するにあたり、原則として当該特許権についての通常実施権者の承諾を得る必要はないが、当該通常実施権者がいわゆる独占的通常実施権者である場合は、その者の承諾を得る必要がある。
引用元:令和4年度弁理士試験短答式筆記試験問題question.pdf (jpo.go.jp)

それでは各枝ごとに回答していきたいと思います。

(イ)について

これは環太平洋パートナーシップ協定(TPP)によってできた改正です。
改正といってもだいぶ前の改正なので最近受験生は勉強を開始した時から存在している条文かもしれません。
出願から特許の付与までの間で、不合理な遅延があった場合、その期間を補償できるようになりました。
さて本改正で、新たな特許権の存続期間の延長登録出願が認められることになったのですが、出願があれば拒絶理由があります。そして拒絶理由があれば無効理由もあります。
ということでこの問題は拒絶理由と無効理由に違いはあるかと聞いています。

 請求することができる理由とされていない理由はない
 わざとわかりにくくいってませんか?かまいたちのネタかよっ。


確かにややこしいですが特許法の67条の3 第1項各号の拒絶理由 と 125条の2第1項各号の無効理由 を比較して違いがあるか見てみると違いはありません。

したがって回答 は〇

この改正は他の改正と違って、改正本もありませんし離れ小島のような存在です。しかし青本には割と詳しく説明がのっています。
青本は専門書で難しいものだと考えている方もいるかもしれませんが、難しくも怖くありません。
むしろその逆で、難解で無機質な条文を丁寧に説明してくれる公式マニュアルとお考え下さい。
言うならば青本は独学受験生の仲間であり先生なのです。
私も、短答は予備校に通わずに、過去問→条文→青本 のループで突破しました。
必ず最新の青本を購入して間違った問題の条文を調べましょう。

(ロ)について

こちらの問題は令和3年の改正です。令和3年の改正で第105条の2の11が規定されました。
特許事件の対世効と複雑さを考慮して、裁判所が、広く一般の第三者に対し、意見募集をできることとしました。
しかし本規定は特許権等の侵害に係る訴訟に対して認められるのであって特許無効審判の審決に対する訴えの審理に対して認められる規定ではありません。

したがって回答は×

(ハ)について

この問題は改正が関係ありません。
原則として行政処分に対しては、行政不服審査法という法律で不服申立てができることになっています。そして特許庁のような行政機関が下す処分はまさに行政処分に該当するわけですが特許法では、独自の不服申立ての途があったりするので、例外的に 行政不服審査法上の不服申立てを制限しています。

マイナーですが195条の4には次のような規定があります。 
査定、取消決定若しくは審決及び特許異議申立書、審判若しくは再審の請求書若しくは第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項の訂正の請求書の却下の決定並びにこの法律の規定により不服を申し立てることができないこととされている処分又はこれらの不作為については、行政不服審査法の規定による審査請求をすることができない。

この中に「被請求人が提出した答弁書が不適法なものであってその補正をすることができないものとして決定をもって却下された場合」はないので、原則通り行政不服審査法の審査請求ができます。
ちなみに「審査請求」という言葉が、わかりにくくて引っかかると思いますが、これが不服申立ての具体的な手続きだと思っていただければOKです。

したがって回答 は〇

(二)について

こちらも令和3年の改正の問題です。
従来、口頭審理による審判をするときは、「期日の呼出し」というのがあって出頭しなくてなりませんでした。
しかし、新型コロナウィルスの感染拡大で出頭することが困難な場合も考えられるのでオンラインで口頭審理期日における手続ができるようになりました。
しかしオンラインによって口頭審理期日における手続ができるのであって、行わなくてはならない訳ではありません。

したがって回答は×

(ホ)について

こちらも令和3年の改正の問題です。
特許に多数の通常実施権者が存在する場合多い昨今、全員の承諾をとることが実情に合致していない等の趣旨から令和3年の改正で訂正審判請求時の通常実施権者の承諾を不要としました。
ですので本問の前段部は正しいです。しかし独占的通常実施権者に対する例外はありませんので後段の部分が間違っています。そもそも独占的通常実施権者は特許法の条文にできてきません。

したがって回答は×

調査

Posted by kisaragia