合格後弁理士登録するべきか? それでもボクは登録する。

2022年3月20日

それでもボクは登録する。

某映画のタイトルみたいになっていますが弁理士登録についてです。

弁理士を続けるにはお金がかかる

弁理士登録にはお金がかかります。
まず弁理士登録時に一時金として登録免許税や登録料がかかるのです。また弁理士資格を維持するのにはお金がかかります。なぜならば弁理士会に毎月会費を支払わなくてはならないからです。その会費は月に 15,000円です。
1年で 15000×12か月=18万円 、10年で180万円、20年で360万円
結構バカにならない金額ですよね!?
1年間に18万円かかります。18万円あれば、毎年海外旅行に行くこともできます。
1か月に15,000円かかるということは85,000円の家賃のマンションを100,000円のマンションにグレードアップすることもできます。
たいてい大企業や特許事務所は登録料を会社や事務所が負担してくれます。しかし私のような中小企業では会社は登録料を負担してくれません。(大企業でも弁理士が多すぎる企業では負担してくれないそうです。)
つまり登録料を会社に支払ってもらえない場合はせっかく勉強をして厳しい試験を突破しても、資格を保有することで実質的な稼ぎが大幅に減ってしまう現象が起きるのです。

金欠の女性

このような理由でせっかく試験に合格しても弁理士登録しない人が多いのです。

【関連記事】 企業の開発職と事務所勤務弁理士どちらがよいか考えてみた。
       弁理士試験合格 会社の反応について

そもそも弁理士資格を持ってるとなにができるの?

そもそも弁理士の資格は
弁理士法第4条に規定されている手続きの代理等 をするための資格です。

第4条
弁理士は、他人の求めに応じ、特許、実用新案、意匠若しくは商標又は国際出願、意匠に係る国際登録出願若しくは商標に係る国際登録出願に関する特許庁における手続及び特許、実用新案、意匠又は商標に関する異議申立て又は裁定に関する経済産業大臣に対する手続についての代理並びにこれらの手続に係る事項に関する鑑定その他の事務を行うことを業とする。

引用元:弁理士法第四条

一般企業は他人の求めに応じ特許などの手続きをするわけではありません。たいていの場合は 特許などの手続きは特許事務所に外注します。また仮に社内の人間が特許の手続するとしても、「他人の求めに応じ」ではないので弁理士である必要はないのです。これは発明を作り出す開発部であろうと、知財部であろうと同じです。
つまり一般企業の社員にとって弁理士資格は直接的には必要がないのです。

弁理士資格の意義

しかし、わたしは弁理士資格には2つの意義があると思っています。
一つ目は、上記の代理業務をできるという意義
そして二つ目は、知財業界に精通した知識があることを証明をする意義

企業の知財部員は技術部の特許の相談に乗ったり、特許戦略を立てることがあります。通常は資格なんて持っていない人が先輩社員に教わってこのような仕事をこなしていきます。

社内のやり方は重要だと思います。
しかし「あの人が言っているからこう」みたいな謎の理由で仕事がすすむことも多くあります。
そして後輩社員は時として、その手続きをとる理由を知らなかったり、手続が間違っていても指摘できずに引き継がれていくことがあります。
こんな時に弁理士の資格を持っているということはある意味会社のローカルルールではない法律の世界としての共通の知識(考え方)を持っていることの証明になります。
資格を保持し続けることで業界の課題やトレンドを掴むこともできます。

企業ではこの2つ目の意義が重要だと思います。

企業にいながら登録することの意味

前編で、弁理士登録することの大きなメリットとしては2つあって
①代理業務をできるという意義
②知財業界に精通した知識があることを証明をする意義
であることを書かせていただきました。

①については企業で開発をしている私には必要のないメリットになりますので②が私にとってのメリットだと思っています。
というのも、企業では(すくなくとも私の勤めている企業では)、声が大きい人の意見が通りやすいです。内容が正しいとか間違っているとかはあまり関係ありません。偉い人や怖い人が、出した意見を否定する人はいませんよね。しかしこういった会社の中でだけ権力を持った人こそが問題だと私は思う訳なのです。

また、会社では頑張っている感を出す人が評価されますがこれも本来あまり良いことではないと思います。頑張っている感を出したりアピールをする人だけを評価すると、若い人たちは本質的な仕事の質をあげるのではなく、見せ方を工夫するようになります。そして頑張っている感の影に本質的な質が隠れてしまって正当な評価がなされなくなると思います。そしてそういった人を上にあげてしまうと若い人のモチベーションが下がってしまうのです。

一方で、試験の世界は実力の勝負なので点数がとれない人は受からないし、点数が取れた人は受かることになります。どんなに大きな声をだしても、頑張ってる感をだしても本質的に理解が足りなければ、得点が伸びず合格できません。
そして「私は知的財産に対しては社内だけではなくて経済産業省の太鼓判が押すだけの一定の理解をしているんですよ」ってことを、声を荒げることなくスマートに相手に伝えられるのが登録によって得られる「弁理士」の称号なのです。

統計からみた登録弁理士

下の表は日本弁理士会が発表している年度末の登録弁理士の数の表です。経営は取り除いて勤務している人数のみを表にしています。

2019/3/312020/3/312021/3/31
特許事務所勤務254824502411
特許業務法人勤務170617831820
特許事務所勤務と特許業務法人勤務の合計425442334231
会社勤務265027372776
弁理士数(自然人)113361146011556
登録弁理士の数
会社勤務の弁理士数のグラフ

特許業務法人と特許事務所については勤務する側にとってはそれほど違いがないと思ったので合計の数字を出しています。その合計値でいうと弁理士数が増えているにもかかわらず減少しています。それとは逆に企業内弁理士が増えています。
これは企業において上記①の「 代理業務をできるという意義 」以外にも、弁理士登録する意義があると考えられているからだと思います。
そもそも弁理士=明細書作成の代理業務 という考え方は古いのかもしれません。
国は弁理士の数を1万人以上にまで増やしてまだ増やしています。本当に全員が 明細書作成の代理業務 をやったらかなりの人が食っていけなくなります。
IPランドスケープやその他知財戦略的な仕事も資格を持っていたほうが、幅広く情報を集めながらできるので企業からのニーズがあるのだと思います。
TOEICや英検は、それを持っていないと遂行できない業務はありません。単純に英語力の認定に使われている試験です。 弁理士も知財検定の最上級的な認定資格だと思います。

その他登録のメリット

その他登録のメリットとしては、弁理士研修システムによって研修が受けられることです。その他に入れてしまいましたがとても大きなメリットです。すごいところとしてはeラーニングが充実しており、1000以上の研修が無料で受講できます。ポイントとしてはeラーニングというところで、好きな時に好きなところで受講できるので、私のように勤務中に研修に行けない人にとって使い勝手が良いです。法改正があると、すぐにその説明の研修がアップされるので、知識のメンテナンスができます。

未登録について

私の同期でもわずかではありますが登録料を払ってもらえないという理由で、登録をしなかった人がいます。私は登録料を払ってもらえなかったのですが、上述のメリットを考慮して自腹で払って登録しました。
それにしても弁理士試験合格者のうち、どれくらいの人数の人が登録していないのでしょうか?いままでの合格者の累計から登録者数を減ずれば未登録者の数がわかると思うのですが、めんどくさいので計算していません。
ちなみに、登録をしないと弁理士は名乗れないので名刺に「弁理士」と書けません。どうしても書きたい場合は「●●年弁理士試験合格」と書いたりするようです。
なるほどと思いましたが、この資格の知名度の低さを考えたら打合せのたびに余計な説明の時間が必要になってめんどくさそうです。

その他

Posted by kisaragia